胸腔鏡手術とロボット支援下手術

開胸手術から胸腔鏡手術へ

1990年代ごろまでは肺、縦隔の手術は側胸部を15cm以上切開する開胸手術がほとんどでした。その後、低侵襲手術として登場したのが『胸腔鏡(きょうくうきょう)手術』です。小さな穴を数か所あけて、胸腔鏡という内視鏡と細長い鉗子(かんし)という道具を体内に挿入します。外科医はカメラの映像をモニター画面で見て肺や縦隔腫瘍を切除して取り出します。創が小さいので、痛みが少ない、筋肉の損傷が少ない、手術後の回復が早いなどのメリットがあります。当科では完全胸腔鏡手術を導入しており、現在では肺癌手術の8割以上を胸腔鏡手術で行っています。

精密な手術操作が可能なロボット支援下手術

2020年12月より、手術支援ロボット『ダヴィンチ(インテュイティブサージカル社)』を用いた肺癌・縦隔腫瘍に対する『ロボット支援下手術』を開始しました。ロボット支援下手術は胸腔鏡手術のひとつです。小さな孔を数か所あけるという点は従来の胸腔鏡手術と同じですが、異なる点は外科医がロボットを操作して手術を行うということです。外科医はコンソールという座席に座って、モニター画面を見ながらロボットの鉗子を操作します。

体内に挿入したロボットのアームには複数の関節があり、コンピューターが外科医の細やかな手の動きを忠実に伝え、自由度が高い、精密な手術操作が可能となります。また3次元モニターで術野を立体的に拡大してみられるため、細部の手術が正確に行えます。まるで患者さんの体内に入って手術しているかのように感じるほど視界が良好です。さらに座って手術ができることや、手ブレ防止機能によって外科医の負担を軽減し、長時間高い集中力を必要とする手術の正確性を高めます。これらの技術・機能を外科医が駆使することによって、従来の手術と同等か、より少ない負担で、従来以上の精密な手術ができる可能性があるのです。

ロボット支援下肺がん・縦隔腫瘍手術は十分な訓練を経て認定を受けた呼吸器外科医のみが行うことができ、器械自体にも正常な動作を維持する機能が数多く備わっています。手術に携わるスタッフも訓練を積み、徹底した安全管理の元に行われます。

当科のロボット支援下手術

ロボット支援下手術の執刀をすることができる医師は4人在籍しており、肺癌患者さんのうち2~3割ほどにロボット支援下手術を受けて頂いています。

ロボット支援下手術の適応がある疾患は、肺悪性腫瘍(肺癌、転移性肺腫瘍など)、縦隔腫瘍、重症筋無力症です。すべての患者さんにロボット支援下手術が適しているわけではなく、病状によって向き不向きがあります。詳しく知りたい方は、担当医または呼吸器外科外来(049-228-3756)へご相談ください。

2023年度手術症例数

疾 患例数
原発性悪性肺腫瘍(肺癌)154
転移性肺腫瘍14
良性肺腫瘍1
胸膜腫瘍1
胸壁腫瘍1
縦隔腫瘍24
疾 患例数
炎症性肺疾患9
膿胸8
嚢胞性肺疾患1
気胸49
胸部外傷1
その他5
268
うちロボット支援下手術は64例でした。
疾 患例数
原発性悪性肺腫瘍(肺癌)154
転移性肺腫瘍14
良性肺腫瘍1
胸膜腫瘍1
胸壁腫瘍1
縦隔腫瘍24
炎症性肺疾患9
膿胸8
嚢胞性肺疾患1
気胸49
胸部外傷1
その他5
268
うちロボット支援下手術は64例でした。
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